職場でアライになるための5つの行動
職場におけるアライとは?
企業がダイバーシティ&インクルージョンを推進することは、もはや今日の生き残り競争を勝ち抜くうえで、必要不可欠になってきています。しかしながら共通して直面する課題のひとつとして、社内で推進に協力してくれる人がなかなか増えないことが挙げられます。ビジネスにおいて違いを活かすことが企業がダイバーシティ推進に取り組む意義ですが、その前提として、女性の活躍やLGBTQ、障がいのある人や人種・国籍など、社内におけるマイノリティ当事者が働きやすい職場環境を醸成することが重要です。ダイバーシティ&インクルージョンはマイノリティ当事者だけの問題ではありません。働きがいのある職場を実現するためには、たとえ自分たちが非当事者であっても、アライとしてこのダイバーシティ&インクルージョン推進を牽引していく必要があります。
アライとは、支援者・盟友のことであり、いちダイバーシティの当事者が直面している課題を(i)理解し、(ii)自分ゴトとして捉え、(iii)その推進のために自ら積極的に行動する人のことです。これは、職場においてダイバーシティ&インクルージョンの施策を進める際に、非当事者であっても当事者コミュニティに自発的・積極的に関与することができることを意味し、誰もがアライになることができるのです。
なぜアライの存在が重要なのか?
Change Catalystの調査によると、92%の人が、自身のキャリアにおいて、アライの存在が役に立っていることが分かりました。たとえば、全人口の約3-10%がLGBTQ当事者であると言われています。その場合、10%にも満たないグループが職場を変えるために翻弄するよりも、残りの90%以上の人々がアライとして、インクルーシブな職場を作っていくことがより影響力があることは明白です。他の調査でも、職場に心強いアライの存在があることで、50%離職を考える社員が減ったり、75%病気休暇を申請する社員が減るという結果が出ています。
また、女性の活躍においても、男性が積極的に施策にコミットしている組織の96%で、目に見える進捗があることが証明されています。それに対して、男性のコミットが足りないと、ジェンダー平等の進捗は30%程度の企業にしか見られないと言われています。これに加えて、女性役員やその他、エスニックダイバーシティが経営層に30%以上配置されている企業は、そうでない企業よりも36%以上利益を上げていることも分かっていることから、積極的なアライが、組織の多様性を高めることで、ビジネス自体にも大きな影響があることが言えます。
アライになるための5つの行動
では、どのように誰かのためのアライになることができるのでしょうか?Ikigai Authenticではアライになるための5つの行動を推奨しています。
ステップ 1. 自分の“立場”を活かす
英語では、この立場を”Privilege (特権的な立場)”と表現されることがあり、近年、ダイバーシティ&インクルージョンの文脈において積極的に議論されています。組織や社会において、マジョリティである場合、自動的に影響力や権限を持つことがあります。なぜならば規則や福利厚生、キャリア開発の機会などはマジョリティにあたる人が享受しやすいように組み立てられているからです。言ってみれば、このマジョリティである「優位な立場」を誰かのために活かすことから、アライシップは始まります。
ステップ2. 積極的にフィードバックを求める
「フィードバックはウェルカムなんだけどなかなか来ない」「悩みや困っていることを言ってくれたら全力でサポートするのに」「何も言わないからキャリアに不満がないと思った」となんとなく待ちの姿勢になってしまう人も少なくありません。皆さんがアライとして認識されていないとしたら、なんとなく相談しづらかったり、場合によっては何かに困っていても諦めてしまっていることもあるかもしれません。そのような中、アライとして積極的に周囲が困っていることを傾聴し、自分の立場や権限において何ができるのかを見極めていくことが必要となります。
ステップ3: キャリアやグループのスポンサーになる
自らが管理職である場合、自分の部下や同僚のスポンサーになることができます。スポンサーとは、自らの影響力や権限を活かし、部下や同僚の活躍を組織内で見えやすいようにし、これまで以上にその人のキャリア開発の機会を向上させられる存在のことを指します。スポンサーシッププログラムなどを通じて、積極的に多様な人材をより意思決定に近い役職へ登用している企業もあります。また、管理職でなくても、社員ネットワーク (ERG*)やダイバーシティに関連するイベントに積極的に関与することで、ダイバーシティ&インクルージョンの啓蒙やその重要性の認知を上げることに貢献することができます。
ステップ 4. 当事者の声になる
積極的に当事者の代弁者となりましょう。マイノリティ当事者である場合、困っていることを相談したり、制度改正を求めたりしたら、「権利主張が過ぎないか」と心配し、困っていることを相談するのを躊躇してしまう傾向があると言われています。自身の立場(privilege)を活かし、整備が必要な制度や是正する必要があることがあるときは、自ら声をあげましょう。
ステップ5 ビジネスに活かす
最後に、自身の部署や役職においてできることを具体的なアクションとして考え実践していきます。ダイバーシティ&インクルージョンやアライシップは、人事や担当部署の管轄だけではありません。たとえば広報部であれば、PRやCSR、SDGsの一環として取り組めることもあるかもしれませんし、ビジネス事業部にいたら、商品やサービスの開発に多様な人材の視点を活かすことができます。また、自らが管理職であれば、昇格やアサイメントの機会など、積極的に当事者のキャリア開発を支援していき、ビジネスケースを作ることもできるでしょう。
ダイバーシティ&インクルージョンを推進する際、アライリーダーとして、その直接的な当事者でない人が積極的にコミットしていくことが重要です。また、状況や置かれた環境、ライフステージにおいては、誰しもがマイノリティ当事者になることもあります。ダイバーシティ&インクルージョンを自分ゴトとしてとらえ、自らの立場や影響力を活かし、積極的なアライシップを発揮していきましょう。
*Employee Resource Groupの略称