#国際女性デー 及川紗利亜様(歯科医師・2022ミスユニバース日本大会準優勝)インタビュー
天野: 国際女性デーに合わせて、各業界で活躍する女性へインタビューをしています。及川さん、まずは自己紹介をお願いします。
及川: 及川紗利亜 (おいかわさりあ)と申します。27歳で、岩手県出身、現在は埼玉県に住んでいます。埼玉の大学で歯学を勉強し、歯科医師の免許を持っています。大学時代からモータースポーツを始め、現在は女性だけのレースに出場するためにトレーニングを重ねています。2年前にミスユニバースジャパンに挑戦し、一度目は日本大会で第四位、翌年にもう一度挑戦し準優勝という結果を残しました。ミスユニバースは小さな頃からの憧れであり目標だったので、このような結果を収めることができてよかったなと思っています。
天野: 女性だけが出場できるモータースポーツレースについてもう少しお聞きしても良いですか?
及川: 富士スピードウェイという静岡県にある国際サーキットで、女性だけが出場できるレースです。7年前に始まり、そのレース出場のためのオーディションがあり、そこでチームと契約をする機会がありました。モータスポーツが好きで、自分が出場したらどうなるかなと思いオーディションに参加しました。そのレースには1級整備士の資格を持っている方や国際弁護士として働かれている方から高校を卒業したての子などいろいろな女性が参加しているので、その中でも歯科医師の肩書とミスユニバースの経験を持つ自分が出場することによって、モータスポーツを盛り上げることができるのではないかと思い、出場しました。
天野: ミスユニバースに出場したきっかけは憧れからだったとおっしゃっていましたが、モータースポーツやミスユニバースに参加するきっかけや原動力などはありますか ?
及川: まずミスユニバースは小さい頃に見て、自分でもこうなりたい、なれるんじゃないかなという思いがあって挑戦してみました。自分をミスユニバースに当てはめた時にすごく近いものを感じて、 自分が理想とするものにも近かったし、自分であればそういう存在になれるんじゃないかなと思ったので。モータースポーツも、かっこよくて自立した女性という像がすごく素敵で。レースを見ていて、楽しいというのもありますが、自分だったら戦えると思って私は挑戦してますね。
天野: 及川さんにとって、ワクワクや楽しみはかなり大きな要素でありそうですね。ミスユニバースに2回出場されていますが、その機会を通じてジェンダーアイデンティティーについて考える機会は多いと思います。その経験からジェンダーアイデンティをどのように確立させていきたいか、どのようなアイデンティがあるか、について何かお考えがありますか?
及川: ミスユニーバスの選考の場では、若い女性たちが、今起こっている世界の情勢について討論したりする機会がすごく多かったのですが、私自身が岩手で高校時代まで過ごす中、そんなに女の子の友達と討論をする機会はありませんでした。ですが、この経験を岩手に持ち帰り、高校生の子たちに、自分の意見を持った女性たちがいることを伝えることによって、その(世界情勢について)ような話をしても良いんだと思えるきっかけになれば良いなと考えています。きっと彼女たちも口にしないだけで考えていることはたくさんあると思うので。あとは、女性だからモータースポーツは無理とか、ミスユニバースに対してもあまり良いイメージを持っていない方っていると思うんです。ミスコンテストで女性の美しさ、外見的な要素を競うことを良しとされない方もいらっしゃいます。実際に私もそういう言葉を投げかけられたことがありますが、日本大会を見て、私が今までしてきたことを認めてくれる方や意見が変わったっという人にも出会い、本当に良かったと思っています。
天野: ジェンダー平等を考えた時に、指数的にはまだギャップがあるという見解があります。習慣や指数など様々な要素を考慮し、ジェンダー平等という概念について将来的な目標やゴールがあるとしたら、及川さんご自身はどのように定義されますか?
及川: 女性が出産、育児などライフイベントを迎えた時に、自分の目標を諦めなくて良い、ということが可能になれば良いなと私は思っています。例えば、私自身もモータースポーツやミスユニバースに出場する際、年齢で諦めそうになったことがあるのですが、私のようにそこで諦めずに挑戦する人が増えてくれれば良いなと思います。
天野: ミスユニバースやモータースポーツに挑戦する中で、課題や障壁に直面した際、どのようにモチベーションやインスピレーションを維持していましたか?
及川: 私は好きなことや楽しいことをしている時は、すごく集中するタイプなので、困難に直面した時も、目標や自分が何をしたいのかをもう一度考えることによって、モチベーションを維持することが出来たと思います。先ほどもお話しさせていただいた通り「ミスユニバースジャパンで日本代表になって世界大会に行きたい」という目標を小さな頃から持っていたので、その目標を思い出すことによって一度目の4位から、さらにもう一度挑戦しようという気持ちになることができました。
天野: ミスユニバースのセミファイナルに選抜されている皆様は、考え方や思考が確立されていると思うのですが、皆さんの中に考え方や思考回路の上で、共通点は何かありましたか?
及川: 目標を持っていない人はいませんでした。ミスユニバースじゃなかったとしても、別のフィールドでの目標を持っている人もいました。たとえミスユニバースに選ばれなかったとしても、自分はこういうことをしたいという強い信念が皆にあったと思います。
天野: 目標を確立するのは人によっては難しいと思いますが、そのような人へ何かアドバイスはありますか?
及川: 私の場合、ミスユニバースが好きだったので、そこからこうなりたい!その先にこのような行動をしたい!と目標が形になっていきました。自分が好きなことを追求していくと、自分がどういう人になりたいか、という像がおのずと見えてくるのではないかなと私は思っています。
天野: 「好きこそものの上手なれ」のように、やはり自分の好奇心やポジティブな感情がそのモチベーションになるということですね。先ほど、やりたいことがあるけど女性である等の障害があって諦める人もいると話されていましたが、モータースポーツであれ、歯科医であれ、ミスユニバースであれ、仕事をし始めた方々や目標を持ち始めた方にどのようなアドバイスがありますか?
及川: 何かを始めたばかりの時は、すごく楽しいことももちろんあると思いますが、同時に不安なこと、大変なこともたくさんあると思います。その中でも、自分のやりがいを見つけ、困難な場面も乗り越えつつ続けてみることが大切だと思います。私自身も、好きなこと、楽しいことを続けることにより、新しい才能や自分の良さに気づくことができました。それによりきっと新しい自分の目標や新たな才能を見つけることができるのではないかと思います。
天野: 及川さんにとってロールモデルはいらっしゃいますか?
及川: ダイアナ元妃です。彼女の、エイズ感染者やハンセン病感染者に対しての、その時の世間の差別的な考え方を変えていった影響力が素晴らしいと思っています。私自身、医療に携わる一人として、私が医療でのエンパワーメントとして今一番力を入れているのが『口唇口蓋裂』に関する啓蒙活動なのですが、彼女のよういろいろできたら良いなと思います。
天野: 及川さんがダイアナ元妃をお手本としているように、他の女性が及川さんを見た時に、その人にとってどのようなロールモデルになりたいですか?
及川: 小さな頃にミスユニバースを見て「私でもこうなれる!」と思ったように、若い世代の方たちが見て、「自分も及川のようになれる!」と思ってほしいなと思います。遠すぎる存在ではなくて身近な存在として「及川さんがこんなことやってたんだったら自分にもできる」と思ってもらえる存在になりたいです。
天野: 美容の啓蒙活動についてもされているとのことですが、具体的にどのような活動をしているのですか?
及川: 美容専門学校で講演活動させていただいたり、東京都にあるインターナショナルスクールでメディカルクラブの学生さんたちにお話させていただいたりと、色々とまずは知ってもらう活動をしています。
天野: 啓蒙活動を行う際に、重要な要素は何だと思いますか?
及川: まずは知ることが大事だと思います。私自身の経験ですが、先に触れた『口唇口蓋裂』という言葉を知らなかったので、まずはどんなことなのかを具体的に知るということが大切だと思います。口唇口蓋裂は手術が必要で、外見にかかわるので、例えば先延ばしして小学校生になった時点で手術をすると、整形したなどと陰口を言われたりすることがあるそうです。このような行為は知らないということによって起こると私は考えています。
天野: なるほど、確かに自分もその単語自体は知っていますが、具体的な説明はできません。無知によるバイアスは確かにあるかもしれないですね。
何かをセレブレーションする際、その対象外の方の意識もとても重要だと思います。今回であれば、もちろん女性の方々のセレブレーションやエンパワーメントも大事ですが、同時に男性側の意識も重要だと思います。あえて女性の視点から、男性が普段どのようなことを意識するべきかをお聞かせいただけませんか?
及川: 男性も国際女性デーを一緒に祝ってくれる人が増えたら良いなと私は思います。その日だけを祝うのではなく、女性側に立ってくれる男性が増えてくれればきっと女性も生きやすい社会に変わっていくと思います。知らん顔をするのではなく、男性も一緒に女性について考えて、女性の権利について一緒にSNSなどを通じてシェアしたりアップしてくれる人が一人でも増えてくれれば変わってくのではないでしょうか。