いまさら聞けない?LGBTQIA+って?
毎年6月の訪れとともに、数多くの企業がプライド月間 (Pride Month)を祝うために、さまざまなイベントや広告キャンペーンを展開します。この時期になると、私たちもしばしばLGBTQ+という語彙を目にします。最近のコラムでは、このLGBTQ+のテーマをメンタルヘルスの視点から、またプライド月間の背景とその意義について探りました。
しかし、ここで一度、LGBTQ+、そして最近よく使われるLGBTQIA+の各文字が具体的に何を示しているのか、また最後に付されたプラス記号の意味は何なのか、という疑問をひも解いてみることも重要かと思いました。これらの詳細について、まだ理解されていない方もいらっしゃるかもしれません。今回のコラムでは、LGBTQIA+という用語の具体的な定義と、これらの語彙がなぜ重要なのか、またプラス記号が包括するその意味まで解説します。
LGBTQIA+のLはレズビアン、女性同性愛者を指し、Gはゲイ、男性同性愛者を指します。レズビアンは省略形でレズと言われることもありますが、「レズ」という表現は、日本語においてレズビアンを性的な対象物として描く際に頻繁に用いられてきました。そのため、この言葉はレズビアンの真の意味や尊厳を奪う傾向があると捉えられ、使用を控える傾向が見受けられます。
Bはバイセクシュアル、定義が異なることもありますが、主に男性や女性、そしてそれら以外の性別に対して恋愛的または性的な魅力を感じる人々のことを指します。また男性や女性だけでなく、その他の性別に対しても恋愛的や性的な感情を持つことをパンセクシャルとも呼ばれています。
Tはトランスジェンダー、持って生まれた身体の性別と自分が認識する性別が一致しない人々のことを指します。これにはトランスジェンダーの女性や男性だけでなく、自身の性別を男性でも女性でもないと自認する人々も含まれることがあります。このような性別二元論に当てはまらない人々も「トランスジェンダー」という用語で包括的に表現されることがあります。その中には、「トランス・ノンバイナリー(生物学的な性別と一致しないと感じ、自身を男性でも女性でもない、あるいはその両方であると認識する人々のこと)」や「トランス・マスキュリン(持って生まれた体の性別が女性の人の中で、自己のジェンダーアイデンティティをより男性寄り、または男性として認識する人々)」などと自己を表現する人も含まれると言われています。
Qはクィア、クエスチョニング2文字が主に当てはめられ、クィアは異性愛やシスジェンダー(持って生まれた性別と自認する性別が一致する人々)を社会的な規範とすることに反対する姿勢を表すアイデンティティとして、あるいは性的マイノリティ全体を包括的に表す用語として使用されることがあります。また、全てのジェンダーに対して性的魅力を感じる人々を指す言葉としても用いられます。この言葉は英語圏で、「奇異な」や「異常な」などの意味を持つもので、元々は性別二元論に当てはまらない人々や異性愛者ではない人々を侮辱する目的で使われてきました。しかし、20世紀末からは、これらの侮蔑的な表現を逆手にとり、性的マイノリティ自身が自己を誇り高く表現するためのアイデンティティとして採用し始めました。「我々はクィアである」という堂々とした姿勢とともに、新たな運動や研究が展開されるきっかけとなりました。Netflixで人気のシリーズである”Queer Eye"のQueerはここからきています。クエスチョニングは自己が認識する性別や性的指向がまだ明確には定まっていない、または自分自身で敢えてこれを確定しないでいるという性的自己認識を示す表現です。
近年では、IとAを足しLGBTQIA+と定義し、使用する人も増えています。IはDSD(Difference of Sex Development)、生物学的な性別が男性または女性という二元的な分類に適合しない身体的特徴を持つ人々を指すと言われています。英語では「Intersex(インターセックス)」と呼ばれ、これがLGBTQIA+の"I"の由来となっています。日本語においては、「インターセックス」や「半陰陽」などの言葉が誤解を招いたり、侮蔑的な意味合いで使用されることがあるため、これらの表現の使用は避けられることが多いと言われています。
またAはアセクシャル、他人に対して性的な魅力をほとんどまたは全く感じない、あるいは性的な欲求が低いまたは全く無い人々のことを指します。このような人々は「ノンセクシャル」とも自称します。
LGBTQIAと違う形での性自認を持つ人も存在し、LGBTQIAの他にも様々な性のあり方があることを表して+を最後に付け足しています。
自分自身も常に意識して行動する必要がありますが、LGBTQIA+やプライド月間について議論する際、「普通」や「ノーマル」といった言葉の使用には注意が必要です。プライド月間やLGBTQIA+に関する話題を扱うとき、自分がLGBTQIA+に属さないと自認する人々が、「普通」や「ノーマル」などといった言葉に頼ることがあります。ですが、そのような言葉の使用には問題が潜むことを認識する必要があります。それは、自らがLGBTQIA+「ではない」ことを「正常」と暗に示し、LGBTQIA+「である」ことが一般的な「正常性」から「逸脱」していると暗黙的に描写してしまうからです。これは結果的に、異性愛が唯一の「普通」であり、男女二元の性別規範が絶対であるという、狭い視野の規範を推奨・強調してしまうことに繋がりかねません。その代わりに、「異性愛者」といった、より具体的で正確な表現を使用することで、主観的な価値観に基づいて他者を評価することを避けることができます。
私たちがこれらの言葉を理解し、正しく使うことは、多様性を尊重し、人々の個々の経験とアイデンティティを認識するために極めて重要です。それぞれの文字や記号が持つ意味を理解することで、私たちの社会はより一層の理解とインクルーシブな姿勢を深めることができるでしょう。